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2009年9月30日水曜日

兵頭先生が杉山先生に対抗するそうです

 小官は先週まで、杉山徹宗先生の「平和宇宙戦艦が世界を変える」の内容を皮肉たっぷりに紹介してきたつもりでした。
しかし、今になってアマゾンのレビューを読んだところ
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この本を読んで得られるメリットはいくつか有るが、

1.先に挙げた「本そのものの内容を疑うことを憶えられる」と言うこと。
2.ゲームや小説に出てくる「読むだけで正気を失う魔道書」のような体験ができること。
3.書評や店頭で実際に中身を確認できる事の大切さを知ること。

等が上げられる。
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まったく、かなわんなぁ…こいつら一体何所でこんな悪辣なギャグセンスを身につけて来るんだか。

さて、そんな杉山先生に対抗しようとでも考えたのか、ソッチ方面では結構有名な兵頭二十八先生がこれまた「自衛隊無人化計画」なる本を出しておるようなのです。

本書の主張せる所は、早い話が「ドロイド軍の創設」であります。
にっくき敵国に強襲着陸した平和宇宙戦艦から吐き出されるラジャラジャの群れ…中々に興味深い日本の将来像です。

もっとも、ジュンク堂にて内容を立ち読みした限りに於いては、そこまでアレな記述はなく、(とは言っても爆弾積んだ車両にラジャラジャを乗せて特攻させようなんてネタがあったりしましたが)わりと常識的な内容でアマゾンでの評価もおおむねよいものでした。
つっても、レビューの内容がみなマンセー記事ばかりという次第ですが。

…まあ、ネタ本っちゃネタ本なんですけどね。

現実の話をすると、先進国の大多数がGDP比2%前後の軍事費を消費している中、日本はこの値がまあ1%弱といったところなので、少なくとも物理的にはこの方面への伸びしろは充分にあると考えます。
軍事技術の開発に税金を掛け流して、社会全体への波及効果を期待するという手法も、用法・用量さえ正しければ非常に有効であることはこれまで米国が身をもって証明してきたところであります。

しかし、日本は戦後この方こういった軍事ケインズ主義的なやり方には非常に懐疑的です。
ましてや、新しい総理であるところのハトハトは友愛の名の下に必要な防衛費すら削りかねないお方です。

ぶっちゃけ、「物理的には可能だが、日本はその方向へは舵を切り得ない」そういう内容の本です。

2009年9月25日金曜日

与那国島の件その後

 過去にわが四畳半電波搭では与那国島に自衛隊が配備されるかもしれないというをしましたが、どうやらこの話はナシになったようです。
まあ、みんすと言えば中国大好きですもんね。

ただし、普天間の件についてはお茶を濁しているようなので、こっちの方は数年でどうのこうのという話にはならない気もします。

2009年9月23日水曜日

平和宇宙戦艦その7

 民主が政権与党となった事で、色々と困った事になるんじゃないかという話がある一方で、連立政権の中でも左派の社民党が民主を困らせるという珍事が起こっていたようです。
あんな事言う人が居るくらいなら、いっそのこと民主から切られて向こう数年は野党をやってて欲しいもんですが。

さて、今回はいよいよ「平和宇宙戦艦が世界を変える」の最終章
”日本に数千億兆ドルの外貨をもたらす”
となります。
言うまでも無く「数千億兆ドル」という文言に突っ込んではいけません。

そこで豆知識サイトへのリンクを貼り付けるなんて、えげつない艦長ですね。

ハンス、お前さんとはやはりきちんと話し合った方がいいようだな。
そんな事よりさっさと始めて貰おうか。

はい、本章の内容は
・超音速旅客機の実現を早める
・宇宙旅行は日本の巨大宇宙船で
・軍事紛争がなくなると日本は超経済大国となる
・地球規模の旅行ブームとなる携帯型自動翻訳機
・子供達に夢を与える効果は絶大
・技術窃盗を防いだ上で「平和宇宙戦艦」の建造を
となっております。

というわけで、まずは最初の”超音速旅客機の実現を早める”だな。
「実現を早める」というか、超音速旅客機は既にツポレフ144コンコルドなどが実用化されてたが、環境問題の関係でボツになったという経緯がある。
しかし、この問題に関して著者はこういう事を言っているな。
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 世界にジェット旅客機が登場したのは一九五〇年代であるが、それからほぼ六〇年間というもの、スピードはマッハ1ほどで推移してきた。英仏が開発したコンコルドはマッハ2で運行したが、ビジネス界は受け入れなかった。ジャンボジェット機の速度よりも少し早いというだけで、搭乗者数が一〇〇人と限定されていた上に、極めて高い運賃であったため、記念に乗る人はいても、ビジネスマンが利用できる大量輸送機関としては相応しくなかったからである。
 日本が開発を進めているSSTの速度はマッハ2であるが、極超音速ジェットエンジンやスクラムジェットエンジンが実用化すれば、さらにスピードはアップされ、将来はマッハ10が標準速度となる可能性もある。
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一般にジャンボジェットと言われるボーイング747型は最新型でも巡航速度はマッハ0.855とされている。
これに対して、コンコルドの巡航速度はマッハ2.04。
当然のことながら「少し早いというだけ」なんて文言で片付けることが出来ないほどの優位がある。少なくとも「速度的には」だが。
実際にはビジネス用途での旅客機の利用はそんな事より運賃の安さを重視する傾向がある。
ジャンボジェットや後発のエアバスA380なんかは一機に500人近く詰め込む事で運賃を安くしているし、ボーイングの次世代機B787は500人も乗客が居ないような路線でも従来機種より燃費や航続距離を向上させる事で、受注競争に勝とうという発想で開発されている。
…ここを超音速で飛んでしまうと、当然のことながら燃費は劣悪となる。
超音速で飛行するため、遷音速機や亜音速機には使用されない技術を多用せねばならないから、機体価格や維持管理費用も割高となる。
これが更に、極超音速ジェットエンジンやスクラムジェットエンジンの採用でマッハ10前後で飛ぶようになれば、機体は激しい空力加熱に曝されるので、結果的に構造材には耐熱合金を多用し、燃料も特別なものを湯水のように消費するハメになる。
この問題に関しては、SR-71という好例があるな。
にもかかわらず、本節の中では平和宇宙戦艦の開発が進む事で、超音速旅客機にフロートを付け、水上発進させる事で滑走路が不要となり、空港周辺の騒音問題も無くなるとか言っている。

艦長はスルーしたみたいなので、自分はこの文言を取り上げましょう。
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 米国では、新SST計画をニュー・オリエント・エクスプレス計画として発表し、米国版SSTを「NASP(National Space Plane)」と呼んでいた。ただ、米国のNASAはNASPを開発するために推進してきたX-33計画を中止してしまったため、現時点では超音速旅客機の計画は、日本の他には英国のHOTOL計画とドイツのゼンガー計画があるのみである。
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まず、「National Space Plane」ナショナルスペースプレーンという名称からして超音速機ではなくスペースプレーンの開発を狙った計画であるという事。
そして、X-33はスペースシャトルの後継機を開発する構想で開発されていた実験機であるという事。
HOTOLゼンガーもやっぱり超音速機ではなくスペースプレーンの開発計画であり、しかもX-33より早い段階で中止になっている事。
あまつさえ、ゼンガーは冷戦以前の話ですよ。
一体何をソースにすればこんな事を書けるんでしょう?

…どうだかな、この人の事だからソースが正しくてもほぼ確実に誤読してるんじゃあないのかね。
そして次節”宇宙旅行は日本の巨大宇宙船で”は、平和宇宙戦艦を民間向けに改修したスペースプレーンを開発すれば、三十人くらいの乗客を乗せて宇宙旅行が可能になる、そして日本がこの分野で先んじてデファクトスタンダードを握ってしまえば日本経済が大いに潤うと言っている。

「いや、本来はその平和利用の方が先だろ」と突っ込みたくなるのはさておき、ここで気になるのはこの文言ですね。
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 日本の巨大宇宙船は、月面や火星面に直接着陸ができる上に一週間ほどの滞在も可能であり、さらに木星などへの惑星間旅行も実現することができるだけに、「宇宙海洋開発省」も新たな商業宇宙旅行を制定する必要がある。
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月や火星の表面って、岩と砂ばかりのデコボコした地形でしたよね。
滑走路でも作らない限り飛行艇やスペースプレーンで着陸するのは難しいんじゃないですか?
それに火星行きともなれば、第二宇宙速度まで加速してホーマン軌道に乗せて260日という話ですから一ヶ月程度の宇宙滞在を想定した宇宙船では明らかに能力不足だと思いますけど。

さっきからボケと突込みが逆になっているような気もするが、まあいい。
続く”軍事紛争がなくなると日本は超経済大国となる”だが、ここの内容はまあ平和宇宙戦艦の恐怖統治によって完全平和の時代がもたらされれば、世界各国はそれまで軍事費につぎ込んできた資本をまるごと社会資本の充実に廻すようになるから、土建大国である日本に注文が殺到してウハウハだとそういう事だ。
小官としては、171ページに
「リニアモーターカーから発進する平和宇宙戦艦」
として描かれている明らかにゼンガーをパクッたとしか思えないスケッチの方が気になったもんだが。

というか、防衛費がまるごと民生に廻ったところでそんなに大量の資本が生まれるとは考えにくいのですが。
対GDP比で日本が1%弱、アメリカですら4%でその他の国はまあ2%といったところだと記憶しています。

どちらにせよ、
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 ともあれ、米国発の経済恐慌によって落ち込む日本経済を立ち直らせるために、政治家は景気刺激対策として、数十兆円を充当しようとするが、それだけの予算があるならば「プロジェクトX」に投資する方がはるかに経済効果が期待できるのである。
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こんな事言ってる時点でブン屋さん同様、まず結論ありきで話を組み立ててるのが明らかだわな。

次は”地球規模の旅行ブームとなる携帯型自動翻訳機”ですね。
この節には、平和宇宙戦艦の話は一切出てこないです。
平和宇宙戦艦構想のプレゼンをするという本書の内容上、なんだってわざわざこんな節を挟んだのか理解に苦しむところですが。

というか、やっぱり内容がなあ…
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 だが、この翻訳機ができれば、英語を必修科目として高校や大学が設置する必要がなくなり、その分の時間を国語や数学、あるいは社会や理科などの充実に充てることができる。もちろん、受験科目から英語が外されるのは言うまでもない。
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これだもの。
とてもじゃないが、現在の自動翻訳の技術を過大評価しているとしか考えられない。
ちなみに小官は昔、英語の講義を受けたときに、時間節約の名目で課題のプリントをスキャナでパソコンに読ませて自動翻訳をかけるというチートを行使したが、その精度たるや「直訳そのもの」。
事実、辞書を引く手間が省けた程度でしかなかった。
まあ、グーグルで海外サイトを開くと、英語だろうがロシヤ語だろうが翻訳されたページを見ることはできるから、そのへん参考にすると大まかなところは判るかと思う。

そういえば最近も機内放送で妙な事案が発生してましたよね。
続く”子供達に夢を与える効果は絶大”の節では、平和宇宙戦艦を実現してその成果を博物館に展示すれば若者たちの理科離れを食い止め、科学や数学を学ぶ意欲を与えることになる。
その方がゆとり教育や反日教育よりマシだという事を言っています。

その点は正論っちゃ正論なんだが、まとめの部分でやっぱり
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 米国はキリスト教精神に基づいた民主的社会の実現を目指すであろうが、他の一神教国家が不信感を持つ欠陥もある。理由は、キリストが唱える人間の平等や自由は「キリストが言う神を信じる人の間で」のみ有効だからである。
 だが、日本の場合は、いかなる宗教も受け入れる自然崇拝の信仰心と、武士道精神に基づいた「儀、誠、勇気、恥、思いやり、謙譲」の精神で国際社会と友好を目指すことになるため、一神教の世界も日本のリーダーシップを素直に受け入れる事ができよう。
 しか平和宇宙戦艦は、日本のみならず世界をも平和かつ安定した生活を実現し、人類本来の平和に貢献しつつ日本経済を世界一に押し上げるものである。
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…なーんて事を言っちゃっているな。
仏も拝めばクリスマスも祝う、ある意味無神論的な部分すらある多神教の国が宇宙から地上を軍事的に威圧しつつ、世界中の国にゼネコンを送り込んで資本を巻き上げるとなれば、何所の国も「素直に受け入れる」どころの問題でない事は火を見るより明らかだと思うんだが、物事を一つの方向からしか捉えることのできない人というのは恐ろしいものだ。

そして最終節”技術窃盗を防いだ上で「平和宇宙戦艦」の建造を”の内容は他国、特に中国による技術窃盗には官民挙げて防衛体制を取るべきだと。
これは好き嫌いの問題ではなく危機管理の問題であり、反日意識と孫子の兵法で育った中国人研究者や技術者を重要な技術や情報部門の責任者にするというようなことは絶対にしてはならないというものです。

まあ、かの国が技術窃盗をしているのは事実で特に隣国でなおかつ多数のハイテク技術を擁している日本がガードを固める必要があるのは事実だ。
しかし
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 中国人は決して頭は悪くないが、持てる頭脳を悪の方面に全力を出す民族である。その証拠に、現在の中国製品の九割ほどは、全て日本を始めとする欧米先進国から窃盗してきた技術や情報を徹底的に活用している。中国大陸には十三億人もいながら、ノーベル賞を一人も取っていないことを見てもこのことは分かる。
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ここまで言っちゃったんじゃ、「筆者は中国人が嫌いなわけではない」と言うことは出来ないだろう。
小官が聞き及んでいるところによると、中国人留学生や技術者による技術窃盗というのは、留学の費用を中国政府が負担し、その引き換えに彼らに対して中国政府がこれこれの技術を盗んで来いと指示するという話だ。
「中国人」は悪くないが、「中国政府」に対しては用心し過ぎるという事はないと言うような話ならまだ分かるんだが。

とにもかくにも、問題は日本人が全体的にガードが甘い事なんですよね。
お友達になら企業秘密を教えても構わないなんて、世界標準では非常識もいいとこなんですよ。
重要な秘密に関しては、相手がたとえ親友や配偶者であっても
「それはそれ、これはこれ。」
と言えなかったり、居酒屋でふつーに口に出しちゃったりというのは非常に危険な行為なんですが。
…ちなみにこれは日本国内で売られている「孫子の兵法」をビジネスマン向けに解説したハウツー本の受け売りですけどね。
こういった最低限の自衛策も取れない人がうじゃうじゃいる現状で、お上が裁判員を導入するようじゃハイテク技術なんて、遅かれ早かれ身ぐるみ剥がれてしまうだろうと思いますけど。

それじゃあ、最後の最後に”おわりに”というのがあるんで、ここは丸々引用してみるとしよう。
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 思い起こせば二〇世紀の初頭(一九〇五年)、日本は日露戦争で未曾有の大勝利を収めたが、この時は「日英同盟」が機能した。二一世紀は「日米同盟」によって世界から全ての戦争・紛争をなくす平和宇宙戦艦を建造し、世界平和の実現に寄与するべきではなかろうか。
 幸い、日本は米国とともに平和宇宙戦艦建造技術を最も多く持っている国である。それゆえ、日本国民と米国民の両方を説得し「平和宇宙戦艦」を日米共同で開発するメリットとデメリットを冷静に検討し、一刻も早い決断が必要である。
 そして政治家を決心させるには、全て日本国民のプラグマティズム(現実主義)に基づく平和実現思考にかかっている。一国繁栄主義や空想的理想主義では、世界の諸問題は解決しないのである。
 日本歴史上、未曾有の大敗北を喫した大東亜戦争は、戦後の日本人の意識を一八〇度変えるほどのショックを与えた。戦後六四年間が経過する中で、日本人が大切にしてきた「勇気、恥、誠、謙譲、敬老」などの精神を、大東亜戦争で国家のために戦った人々とともに失ってしまった。
 かつてアニメーション映画で「宇宙戦艦ヤマト」が大人気を博し、主題歌が歌われたが、第二次世界大戦末期、沖縄へ片道燃料で出撃し撃沈された「戦艦大和」が、「平和宇宙戦艦・大和」として蘇るならば、あの歌は太平洋とアジア大陸各地で亡くなった英霊に対して、真のレクイエム(鎮魂歌)になるであろう。
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…この人やっぱり松本零士作品の読みすぎなんじゃあないかね。
ちなみに「宇宙戦艦ヤマト」は「アルプスの少女ハイジ」との視聴率競争の結果、一年の予定が半年で打ち切りになったりしている。
これで「現実主義に基づく平和実現思考」だもの。

その手段が軌道上からのレーザー攻撃とか、英霊に対する鎮魂歌どころか冒涜もいいとこですよね。

ハンス、それは事実だがそこまで言ってはいけない。

了解。

2009年9月16日水曜日

平和宇宙戦艦その6

先週、HTVの一号機を搭載したH2Bロケットが打ち上げに成功しましたね。

既存のコンポーネントを流用したとはいえ、新型のロケットに新型の宇宙機を載せて打ち上げる。
しかも、航空宇宙分野では事故が多発する時期には国境を越えて事故が起こるジンクスがあるというのに、この間韓国でロケットが打ち上げに失敗していた

…というわけで、無事に上がるまではヒヤヒヤもんでしたが。

さて、皆さん今回は「平和宇宙戦艦が世界を変える」の第六章
”平和宇宙戦艦がもたらす政治・外交上の効果”
です。
前回の内容がアレだったんで、この段階で既にどんな感じの内容なのか判る気がしないでもないですが、きちんと消化しましょう。
では先任。

まず最初の節”対日照準中の核弾頭ミサイルを無力化できる”の内容は要するに平和宇宙戦艦の実用化によって核ミサイルが過去の兵器となってしまうという事です。
核ミサイルが過去の遺物となってしまえば、核クラブはその特権的地位を失い、インドやパキスタン、北朝鮮のように核を持とうとする国も無くなると書かれています。

まあ、平和宇宙戦艦構想にせよレーザーMD構想にせよ、核ミサイルをほぼ確実に撃墜できる手段の実用化が核兵器を過去のものとしてしまうという考え方は大筋では間違っていない。
もっとも、そうしたところで宇宙戦艦による軍拡競争が始まるんじゃないかというのは当然考えられる事だし、国連が実質的にはアレだという事を考えると、開発が終了した平和宇宙戦艦を国連に渡したところで充分な技術力を持った国はやはり我も我もと宇宙戦艦の開発にまい進するだろうね。
というか本文中に
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 日本人だけが核兵器反対を叫ぶ中で、国連安保理の常任理事国は決して核を放棄しようとしていない。逆に、彼らに倣って核兵器を保有しようとする国家が次々と現れる始末である。日本人の主張する核兵器のない世界こそが、人類にとっての理想であるが、核を政治や外交の道具として使うパワー信奉の国家が多過ぎる。
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なんて記述があるんだが、オバマが一方的な核軍縮をするんじゃないかと警戒した日本側がストップを掛けたなんてがある以上、日本人だけが理想の世界に生きているなんてのはウソだろうな。
勿論、核兵器を持たないし持つ意思も無い国としては同盟国の核の傘が弱体化することを恐れるのは「パワー原理に基づけば」全く当然の事だ。

次の”在日米軍は全て日本から撤退する”では、平和宇宙戦艦の実用化が日本周辺国家の軍事的脅威を全て払拭するので、在日米軍は日本駐留の口実を失い、必然的に撤退せざるを得なくなるだろうと言っていますね。

ここまで極端な事を言ってると、9条教徒とどう違うのやらという気もするんだがな、続く”領土は確実に日本に還る”では
※領土問題発生
→利害関係の無い第三国の代表にも入ってもらって外交交渉、さらに国連総会でも結論を出す。
→無視される
→国連軍所属の平和宇宙戦艦が出動。国連様の裁きが下る。
…という恐ろしい事を言っているな。
しかも韓国の密漁船や北朝鮮の不審船、シーシェパードやソマリアの海賊も軌道上からエンヂンを破壊して拿捕すべしとも言っている。

そんなものが軌道上から見張ってるとなったら、別に後ろ暗いところが無くてもなんかアレだと思いますが。

テロの首謀者とか敵国の要人を狙撃するのにも使えてしまいそうだよな。
そして”拉致被害者の救出ができる”では北朝鮮に拉致された日本人の救出だけでなく中国に弾圧されてるチベット人やウイグル人、その他の人権問題に関しても、平和宇宙戦艦による支援攻撃の元、多国籍軍やPKO部隊を展開して解決すべしとの事だ。

そんなことが出来るなら、平和宇宙戦艦なんか無くても最初から多国籍軍を展開して介入しますよね。
実際には内政干渉になってしまうから出来ないのですが。

で、最終節となる”「宇宙海洋開発省」は官僚制度改革の試金石となる”では平和宇宙戦艦開発の為に新しい省を立ち上げて年間七~八兆円投入して研究者・技術者を二万人くらい雇うべきだと言っている。
でもってそのためには、強力なリーダーシップで政治任命による人事を行う首相が必要なのだそうだ。

それって、あの党が第一党にでもならないと無理なんじゃないですか。
というか、さりげなく危険な発言ですよね。

胡乱な事を言う。
平和の名の下にスペースプレーンから地上をレーザー攻撃しようなんて言うような人物が危険でないわけがないだろう?

たしかに…
それで次の最終回では”日本に数千億兆ドルの外貨をもたらす”ですね。

先任、判ってるな「数千億兆ドル」には突っ込むなよ。

はいはい、判ってますってば。

2009年9月13日日曜日

この人人権侵害です

この人痴漢です」とは、強力過ぎる黒魔法として知られるスペルです。
しかし金曜に入ったニュースによると、どうもこのシリーズに新しく
「この人人権侵害です」が加わる可能性があるというのです。

具体的には、うざいネット右翼の住所・氏名を特定し
「この人人権侵害です」とやると、これから民主党の人権侵害救済法案によって設置される内閣府の外局”中央人権委員会”という所から怖いおじさん達がやって来て公平なる取り調べという名の下に魔女裁判を執り行うわけです。

…というような冗談はあまりにもイデオロギッシュかつ笑えないので、ここからはこの記事の要点を淡々と述べてみます。

まず、この記事では自治労や日教組といった官公労組や朝鮮総連、民団などの左翼運動団体が民主党の強力な支持基盤であり、民主党が政権を取った今、民主党は彼等の意見を大いに尊重する政策を取ってゆくだろうと述べられています。

次に、そういった民主党の暗部に光を当てようとしないマスコミの報道姿勢には作為的なものが感じられるという事を言っています。
…まあ、小泉なんかの時には自民党がまさにそういった感じだったんで、小官としては「情報弱者にはならないように気をつけましょう」としか言いようが無いんですが。

そして、民主党内の左派勢力が今度こそやらかすに違いないと。
例えば過去の自社さ連立の時代にはわずか一年半の間に文部省が教育委員会に対する是正指導の権限を奪われるなど、自治労や日教組がやりやすくなるような仕組みが作られ、それが未だに克服されていない。
民主党政権が短命に終わったとしても、民主党内の左派勢力は確実にあの時と同じ事をやるだろうという事です。

で、彼らがやりそうな事としてまず外国人の地方参政権、次に人権擁護法。
…冒頭のネタではこの人権擁護法を面白恐ろしく取り上げました。
そして、子どもの権利基本法。
こういった事を民主党を支持する左翼団体の存続のためにやり始めるだろうとの事です。

結局、この記事の結論としてはあの村山政権の時とは異なり、一般の人たちがマスメディア以外にもインターネットという情報交換手段を手にしているので、こういったヤクザまがいの左翼団体が民主党政権とつるんで悪さをしないように徹底的に批判を展開すべきだという事のようです。

ただ、小官としてはこの記事に関して
「なんでもっと前にもっと広く伝えてくれなかったのか」
と思います。
というのは、結果論になってしまいますが民主党政権の成立が確定した後になってこんな事を言っても、つまるところ
「とにかく偉い人を叩けばいいんだ」
とばかりに批判のための批判を繰り返すマスメディアのやりかたと大差無いように思われてならないのです。

ところが、早くも彼らが言ったとおりの事が起きつつあるのです。

これでは彼等のやり方が気に喰わなくても、日本にノーメンクラツーラを生み出さぬ為に、少々不本意ながらも同じポジションを取らざるを得ません。

2009年9月9日水曜日

平和宇宙戦艦その5

 ここのところ小官が扱っている平和宇宙戦艦とは、つまるところレーザー砲を搭載したスペースプレーンであり、架空兵器でこれによく似たものを探すとすればそれはやはりアークバードあたりになるのではないでしょうか。
もっとも、現時点では無人機すら実用の域には無いスペースプレーンならばともかく、在来型の航空機にレーザー砲を搭載して対地攻撃プラットホームとして使用するという研究は既に限りなく実用に近い段階にあります。

さて、皆さん今回はいよいよ「平和宇宙戦艦が世界を変える」の第五章
”米国が平和宇宙戦艦建造を渋るわけ”
ここではついに本書の著者である杉山徹宗法学博士の国際情勢に関する分析が見られるようです。
先任、始めてくれ。

はい、本章の構成は以下のようになっております。
・日米共同開発が理想的なわけ
・真の日米同盟が問われている
・なぜ米国は平和宇宙戦艦建造を逡巡するのか
・軍隊は今後も一〇〇年間はなくならない
・オーストラリアも賛成の平和宇宙戦艦プロジェクト

というわけで、最初は”日米共同開発が理想的なわけ”だな。
ここでは日本が平和宇宙戦艦を開発・配備するにあたって
1.法的な問題
2.国際政治上の問題
3.日本の情報通信設備が遅れていること
という三点が挙げられている。
3の情報通信設備の問題に関しては常識的なことしか書いてないので置いておくとして、アレな記述が目立つのは1と2だな。
まず法的な問題の点で、日本は宇宙空間の軍事利用に関する縛りがきついが、米国では平和維持のための軍事利用ならば許されるという解釈なので実際問題として米国と共同でやった方がやりやすいと。
そして国際政治上の問題として、宇宙からビーム攻撃をされると困る国が外交的に妨害してくるだろうから、日米で平和宇宙戦艦を完成し試験運用を終えた後にはその管理と運用を国際連合に委譲してあとは一切手を引く事にすればいいと。
まあ、こんな事を言っている。

米国を利用し倒して、その実は国連宇宙軍にというわけでしょうか?
過激と言うかお花畑と言うか…
ただ、続く”真の日米同盟が問われている”の内容はわりとマトモです。
日米の主要新聞を比較したところ、日本は「外国=アメリカ」とでも思っているのか海外に関する記事は米国を含むものがやたら多いのに対して米国の新聞はあらゆる国を満遍なく扱っている傾向が強い事。
そして日本のメディアが国際問題の大部分を占めている軍事問題をあまり扱わないために平和ボケが蔓延しているということ。
…困った事には総括の部分でやっぱりアレな記述がある点ですね
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 日本の、沈黙を守る政治や外交スタイルでは、日米同盟はますます形骸化する方向にあり、それどころか、米国や中国の狭間にあって埋没する危険性が出てきている。米国に日本の重要性を認識させるためにはまず、日本経済を世界トップにすることが重要で、日本を抜きにしては政治も経済も技術も立ち行かないと、認識させるしかないのである。さらに米国が中国と基軸を組む事が如何に米国にマイナスとなるかを悟らせるためには、日本自ら平和宇宙戦艦の建造を推進するしかないのである。
 なぜなら、平和宇宙戦艦プロジェクトの発表は、うかうかすれば日本経済が米国を完全に凌駕するだけでなく、日本が米国に替わって世界の警察官になりかねない(日本にはそんな気は毛頭ないが)として、あわてて日本重視の外交・経済政策へと転換することになる。というのは、米国人は世界中の人々が米国を嫌っていることと、日本を最も高く評価していることを知っているからである。
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日本側の国際認識の問題を取り上げたところで、無理矢理このまとめをくっつけちゃうのは乱暴としか思えませんが。

いや、それでもそこの内容はやはり「わりとマトモ」と言うべきだよ。
なにせ”なぜ米国は平和宇宙戦艦建造を逡巡するのか”の節ではいきなりこんな記述がある
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 実は、筆者は一年ほど前から、米大使館関係者を通してペンタゴンに対し、「日米共同の平和宇宙戦艦建造計画」を提案し、その英語論文を送っているが、ペンタゴンは筆者の提案に対して明確な回答を避けてきている。
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送っちゃったんだ、しかもわざわざ英語に訳して!
というか、窓口に使われた大使館関係者の人がかわいそう…

小官のようなアマチュアが見ても、ふつーにリジェクト以前の内容だと思うのだがな、この先生はそれを世界が本当に平和になってしまうと米国が困るからだという事にしている。
第一に平和になると軍人がクビになる。
第二に大量の軍備がまるまる無駄になる。
第三に軍産複合体の人が困る。
第四に世界最強の軍事国家の名を捨てたくない。
…という理由があるから偉い人は一顧だにしないのだろうと言っている。

偉い人は?

うん、米軍でも若手の尉官や下士官クラスは大いに興味を示したそうだ。
直接戦場で戦う立場にあるから兵器を無力化する構想に興味を示したんじゃないかと言っているな。

ふつーにダマされてますよそりゃ。

で、続く”軍隊は今後も一〇〇年間はなくならない”の節では偉い人が心配するように、世界が平和になったからといって即軍隊が不要になるわけではないとフォローを入れている。
平和宇宙戦艦が強制的に世界中の紛争を停止させたとしても、戦後処理や復興のために、従来よりは軽装になるもののやはり軍隊の存在が必要になるのだそうだ。

もっとも、そこではこんな事を言ってますけどね。
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 平和宇宙戦艦が完成し、地球上のあらゆる国家間戦争や地域紛争を停止したとしても、事後の処理が必要なのである。核兵器や各種兵器の処理も残っているし、地雷やクラスター爆弾などの処理も残っている。そうした作業は、現在の陸・海・空軍などでなければできない仕事である。
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以前扱った章で、平和宇宙戦艦はいかなる兵器や地雷もリモートセンシングで宇宙から見つけ出し、レーザー砲で破壊して無力化できるとか言ってませんでしたっけ?

なーんか混乱を招く書き方だよな。
…この本の場合珍しい事じゃないが
そんでもって章末の”オーストラリアも賛成の平和宇宙戦艦プロジェクト”だが、ここの内容はオーストラリアに平和宇宙戦艦の話を持ち込んだところ代絶賛だったからアメリカ以外にも協力する国を探すとしたらオーストラリアがいいだろうというものだ。

ところがどっこい、やっぱりこんな記述があったりします。
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 オーストラリアを訪問して議論した時点では、専らレーザービーム砲によって弾道ミサイルを撃墜する有効性に関しての議論であったため、二〇世紀の技術でも充分に建造可能という点で一致したが、平和宇宙戦艦が海上から発進する話はしていなかった。彼等の認識は、日本の平和宇宙戦艦の帰還用としてオーストラリアの広大な国土に長い滑走路を建設する協力を考えて約束していたものである。
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これってやっぱり「ダマした」って言いません?
というか、オーストラリアの偉い人が賛成したのは基本的にレーザーMDの事なんじゃないかと思いますが。

お花畑なのかケシカランのかどっちかにしてくれと言いたいところなんだが、困った事に次回扱う”平和宇宙戦艦がもたらす政治・外交上の効果”ではどうもこの調子でどんどん進んで行くようなのだ。
全く困ったものだね。

そんなのにいちいち付き合う艦長もね。

…先任、あとでゆっくり話し合おうか。

自分は雑用で忙しいのです。
そういう話は一週間後にでもお願いします。

2009年9月4日金曜日

コルベアのその後

 小官が愚かにも平和宇宙戦艦の話などしている間に、近所でアレな事案が発生しておったようです。
アパートの廊下がごっそり崩れ落ちて白い軽自動車が下敷きになってます。
おっそろしい…

鉄筋コンクリートって、基本的に長持ちしそうな印象がありますけど一般的に住宅などに使用されているグレードのものは30年程度しかもたないそうです。
おまけに沖縄だと潮風が当たるんで鉄筋が錆びてひびが入りますしね。
勿論、金に糸目を付けなければ百年現役ってのも可能ではありますが。

さて、小官は半年ばかり前コメディアンのコルベア氏に関するネタをやりましたが、いつの間にかその内容が粛々と実行されておったようです。
しかしまあ、
Combined
Operational
Load
Bearing
External
Resistance
Treadmill
の頭文字をつなげてColbertとか…少々強引な気もしますけどね。

2009年9月2日水曜日

平和宇宙戦艦その4

 今回の選挙で予想通り民主が第一党となりましたが、勝ちすぎという気もしないではありませんね。
自民と民主の勢力がそっくり入れ替わる形になった事から、今まで自民に入れていた無党派層が、空気に流されてどっと民主に投票したっぽいと愚考する次第です。
本音を言えば、もっとこー色々な野党が乱立してそこに議論の場が形成されると良かったと思うんですけど、それはさすがに贅沢というものでしょうか。

さて、皆さん今回はいよいよ「平和宇宙戦艦が世界を変える」の第四章
”日本が建造する巨大宇宙船とは”つまり「ぼくの考えたうちゅうせん」の章です
ここは内容的に色々アレな部分があるので最初に章全体の構成を紹介した上で内容について考察したいと思います。
では先任

はっ、第四章の内容は次のようになっています。
・巨大宇宙船の構造はこうなる 
・平和宇宙戦艦の装備と飛行士は
・平和宇宙戦艦の値段は五〇〇〇億円
・大量破壊兵器とMDの泣き所
・中華帝国実現の夢を放棄させる
というわけで、最初は平和宇宙戦艦の構造についての話になります。

最初の節では平和宇宙戦艦の性能諸元が紹介されているな。
全長60メートル、全幅36メートル、全高12メートル、
空虚重量50トン、全備重量170トンとの事だ。
…航空宇宙工学の知識も無い人が一体何を根拠にこの数値を導き出したのかという点については置いておくとして、基本的にはまず洋上を船舶として航行し、離水時には主翼と尾翼から一対ずつのフロートを降ろして水上を滑走し、ジェットエンヂンの推力で上昇。
その後スクラムジェットと固体ロケットで宇宙空間へ飛び出すという事だ。

その固体ロケットですけど、本文中にはこんな記述があります。
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固体燃料ロケットに関しては、二〇〇八年に再度利用が決定したM5(GX)ロケットを小型化して使用する。
 このM5ロケットは、固体燃料ロケットとしては究極の進化を遂げたもので、この技術を使わない手はない。そしてこれらエンジンの燃料も船内と尾翼に内蔵できる構造とする。
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GXロケットって液体燃料だったと思いますけど。

小官がそういう細かい問題より気になったのはこの宇宙戦艦の運用に関する思想だな。
地上からのレーザー若しくはミサイル攻撃に対抗するため、この宇宙戦艦には特殊金属の鏡を装甲として施し、地上からの攻撃にはビームを照射してこれを壊滅させるから、もはや「宇宙船」ではなく「平和のための宇宙戦艦」と呼んだほうが相応しくなるのだそうだ。
こりゃやっぱりデススターと呼んだほうが正しいんじゃないのかなあ…

というか、自由電子レーザーってX線も出せるから金属鏡ごときでは防御できないような気がしますが。
設置場所と発電能力の関係上、軌道上の宇宙船より地上のレーザー砲台の方が出力の大きな物を配備できるでしょうしね。

その電力だが、こいつが宇宙空間で活動する際には超小型原子炉と補助動力として太陽電池を使ってレーザー砲等のエネルギーに充てるらしい。
だが、この人の構想で一番の問題は燃料だな。
全備重量170トンのうち、燃料は30~50トンと見積もっている。
いくらエアブリージングエンヂンを採用して推進剤を節約するとしても、周回軌道に乗るのにこれでは明らかに少なすぎる。
というか、どうせ原子炉積むなら原子力ロケットを推進器にするべきだろう。
…世論の反発で潰れる事は必至だが。

次は”平和宇宙戦艦の装備と飛行士は”ですね。
なんでも、平和宇宙戦艦の装備は自由電子レーザー砲と炭酸ガスレーザー砲が各一門で、小型レーザー砲が二門。
加えて宇宙戦闘機を二機搭載すると言っています。
しかもこの宇宙戦闘機は母艦へ戻らずに地球へ直帰する事も想定してやっぱりフロートを付け水上機にするんだそうです。

ふつーに宇宙空間にレーザー砲搭載した要塞を浮かべておいて、地上との間をスペースプレーンなりカプセル型宇宙機なりで連絡した方がまだ実現性が高いと思うがな。
生活用品については、基本的に国際宇宙ステーションで使うのと似たようなもんなんで取り立てて言うほどのことは無い。
空虚重量50トンの乗り物に消耗品を35トンも搭載するなら乗員か活動期間のどっちかを削れよとも思うんだが。
で、乗組員は当然自衛隊員、船のネーミングは大和だそうな。

続く節”平和宇宙戦艦一隻の値段は五〇〇〇億円”では
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 とはいっても、米国が一九七〇年代から現在まで四〇年以上にわたって宇宙開発と軍事開発に費やした費用は百数兆円に上っており、この間、世界中に宇宙中継基地や各種人工衛星を開発するなど、平和宇宙戦艦の運用に関する装置を整えてきている。ということは、日米が共同で宇宙戦艦の建造を進める場合には、平和宇宙戦艦本体と新型エンジンを開発するだけでよいことになる。
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といった事を根拠に開発費用が15兆円、一隻の価格が三千~五千億円と一隻五兆円の原子力空母より安くなりますよと言っていますね。

じつはこの試算にはダマシがある。
ここの部分だ。
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 スペースシャトル一機の価格は二一六億円(一八億ドル)で、開発費の約一〇分の一のコストであるが、日本単独で開発した場合、一五億円の一〇分の一の一・五兆円とはならない。なぜなら、既に開発された技術と材料を使えるので、一隻当たり五〇〇〇億円で建造できる。
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何かの新技術の開発費用が15兆円と言ったら、普通は既に開発された技術と材料に上乗せして15兆必要になるという話なのだが、ここではそれがまるまる無かった事になっている。
事実、本書の106頁右下の開発費用を纏めた表では米国に関して照準器と各種衛星の開発費用の部分がゼロとなっているが、これは開発済みだから追加投資が要らないという意味に他ならない。
うーん、ズルいな。

そして”大量破壊兵器とMDの泣き所”の節ですね。
ここの要点は核弾頭、弾道ミサイル、迎撃ミサイルには
・運搬手段
・弾頭の飛行速度
・ミサイルの頭数
という問題点があり、レーザー砲はこれらに勝るという事のようです。

たしかに、次世代のMDでは地上配備型のレーザー砲が実用化できないか検討されているようだな。
ただし、
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 また仮にアフガニスタンで治安活動に従事する米軍部隊などに対して、テロ組織や武装集団が対戦車ロケット砲を発射しようと照準した時点で、平和宇宙戦艦は宇宙からこれを探知し、直ちにロケット砲の砲身にビームを照射するので、砲身は熱のために曲がって発射ができなくなる。しかも砲身を抱えた人間を殺傷しない利点を持っているのである。
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こういう事書くのはどうだろうね。
テロリストの抱えたロケット砲に、熱で砲身が曲がるほどのレーザーを照射したら普通はロケット砲が暴発してテロリストの人は確実にお亡くなりになると思うんだが。

最後は”中華帝国実現の夢を放棄させる”の節ですね。
ここの内容は末尾のこの部分に集約されていると思います。
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 中国が数億人民の生活向上のための社会インフラを日本などに任せて、宇宙開発に精を出すのは「宇宙を制する者は世界を制す」というテーゼを追っているからで、最終的には中国王朝の皇帝がアジア一帯を支配したように、世界の中華帝国を目指していることは明らかである。
 さらに、中華帝国の実現を目指す中国にとって、米国や日本を軍事的に牽制するために北朝鮮を利用しようとする戦略も練っているはずである。前述したように、既に北朝鮮は中距離弾道ミサイルと核兵器を確実に掌中にせいているが、中国は北朝鮮経済の七割以上を握っているから、中国の外交戦略の一翼を担わせるべく手を打っているふしがある。
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…昔米国や旧ソ連がやっていたのと同じ宇宙開発を中国がやったからと言ってこの叩き方は一体何なんでしょう。
そりゃまあ「わが国は発展途上国です」とか言って、本来なら自国でやるべきインフラ整備を他国に丸投げするのはどうかと思いますけど。

それもあるんだが、この場合やっぱり大きな問題になっているのは航空宇宙分野で日本があまりにも無欲に過ぎた事なんじゃないかと小官は思うがな。
かの国は日本と同等の経済規模にもかかわらず、月探査独自の宇宙ステーションなど野心的な計画を打ち出している。
かたや日本は低軌道へ10トンのペイロードを送れるロケットを保有しながら未だにカプセル型有人宇宙船の一つも飛ばさない。
ふじ構想が計画段階でボツになった事を考えると、これは結局意思の問題だと思うんだが。
自国があまりにも不甲斐無いのを中国のせいにするのはイカンだろう。

そこなんですよね、平和宇宙戦艦だろうがもっと実現性が高そうな他のタイプの宇宙船だろうが、日本はなんか消極的なんですよね。
まあ、役人ってのは失敗を恐れるものですから官僚国家じゃこうなってしまうのは致し方の無いところなんでしょうけど。

ところがどっこい、次回は米国が平和宇宙戦艦の開発を渋っているという話をする事になる。

いやいや艦長、どのみち平和宇宙戦艦みたいな構想じゃ普通に電波扱いだと思いますよ。

それは言わない約束だぞ!