このブログを検索

2013年10月2日水曜日

歴史修正主義と呼びたければ呼べ!

 来年の消費増税が決まりましたね・・・
アレほど露骨に内需にダメージを与えるものは無いんだから、正味の話オリンピックまでは控えてほしかったんですが、まあ大方IMFあたりが増税しないとゴニョゴニョと圧力を掛けてきたんでしょうよ。
実際にゃ日本政府の方がそのIMFに大量に金を貸してる立場だと聞くんで非常に胡散臭く思うのですが。

 さて、小官は某アニメ監督が12月に公開される永遠の0を嘘八百の戦争賛美云々と批判したというを聞いたので、コンビニに陳列されていたのを入手して一通り目を通してみましたよ。

で、結論を申し上げると殆ど史実や実在の戦争経験者の証言を元に構築された世界観・・・というかあの種の史料のコピペそのものの中に宮部久蔵という架空の戦闘機乗りを放り込んだだけの話を嘘八百とはちょっと酷すぎるんじゃないのかと。
むしろ逆に、「妻が居るので死ねません」と言い続けたのに結局特攻で死ぬ羽目になってしまった戦闘機乗りの話とか、本来は高畑勲あたりが反戦アニメにするレベルだろと。

・・・が、話が佳境に入るあたりで見つけてしまったんですねぇ、この辺があの種のおかしなイデオロギーに凝り固まった人達の検閲対象になったんじゃないのかって箇所を。

以下長文(かさ増しできてラッキー)になりますが抜粋
===================
 テーブルに座って注文を終えた時、姉がやって来た、ところが驚いたことに、姉の隣に高山がいた。
「高山さんも、ぜひ武田さんのお話をお聞きしたいというのですが、同席させてもよろしいでしょうか?」
 武田はそれには答えず、ぼくの方を見た。
「困るよ、お姉さん。これは個人的な話なんだから。高山さんは関係ない」
 姉は困ったような顔をした。しかしいくら姉が頼んでもここは曲げられない。
「まあ、いいでしょう。お座りなさい。」
 武田が言った
「恐れ入ります」
 高山は丁寧に頭を下げると、テーブルに着いた。そして名刺を武田に渡して自己紹介した。
「新聞記者ですか」
 武田は名刺を見て呟くように言った。その顔がちらりと曇った。
「今日は取材ではありません。あくまで個人的なお話に同席させていただくということで、よろしくお願いします。」
 高山は深々と頭を下げた。武田は黙って頷いた。
 ちょうど飲み物が運ばれてきた。
「話はのちほど、ゆっくりと部屋でしましょう」
 武田の言葉に、高山と姉もそれぞれウェイターに飲み物を注文した。
「ただし、電話でも申し上げましたが、私自身のこと、それと特攻のことは話しませんよ。話すのはあくまで宮部久蔵氏の思い出についてです」
 武田は紅茶にミルクを注ぎながら言った。
 突然、高山が口を開いた。
「なぜ、特攻のことを話されないのですか?」
 武田は高山を見た。
「私は武田さんが元特攻隊員であったということに大きな関心を持っています」
「私は特攻隊員ではない。特攻要員だったに過ぎない。特攻隊員とは特攻隊に選ばれた者です」
「僭越ですが、私は武田さんのような方が特攻の体験を語ることは、大変貴重なことと思います」
「特攻の体験は語りたくない。特にあなたには」
「なぜですか?」
 高山は大きく息を吐くと、高山の顔を見据えて言った。
「私はあなたの新聞社を信用していないからだ」
 高山の表情が強ばった。
「あなたの新聞社は戦後変節して人気を勝ち取った。戦前のすべてを否定して、大衆に迎合した。そして人々から愛国心を奪った」
「戦前の過ちを検証し、戦争と軍隊を否定したのです。そして人々の誤った愛国心を正しました。平和のために」
「軽々しく平和という言葉を持ち出さないで貰いたい」
 武田の言葉に、高山は表情を変えた。
 しばしの重苦しい沈黙の後、高山は言った
「一つ質問させてください。特攻隊員は特攻要員から選ばれるのですか?」
「そうだ」
「特攻要員は志願ですね?」
「そういう形をとっていた」
「すると、武田さんも志願されたのですね?」
 武田はそれには答えず、紅茶のカップを口に運んだ。
「ということは、あなたにも、熱烈な愛国者だった時代があったということですね?」
 武田のカップを持つ手が止まった。高山はかまわず続けた
「あなたは戦後立派な企業戦士となられましたが、そんなあなたでさえ、愛国者であった時代があったということが、私には大変興味があります。あの時代は、あなたのような人でさえそうだったように、すべての国民が洗脳されていたのですね」
 武田はカップを皿に戻した。スプーンとぶつかって派手な音を立てた。
「私は愛国者だったが、洗脳はされていない。死んでいった仲間たちもそうだ」
「私は特攻隊員が一時的な洗脳を受けていたと思っています。それは彼らのせいではなく、あの時代のせいであり、軍部のせいです。しかし戦後、その洗脳は解けたと思っています。だからこそ、戦後日本は民主主義になり、あれだけの復興を遂げたと思っています」
 武田は小さな声で「何と言うことだ」と呟いた。
 高山は畳みかけるように言った。
「私は特攻はテロだと思っています。あえて言うなら、特攻隊員は一種のテロリストだったのです。それは彼らの残した遺書を読めばわかります。彼らは国のために命を捨てることを嘆くよりも、むしろ誇りに思っていたのです。国のために尽くし、国のために散ることを。そのには、一種のヒロイズムさえ読み取れました」
「黙れ!」
 いきなり武田は怒鳴った。ウェイターが驚いて振り返った。
「わかったようなことを言うな!我々は洗脳などされておらんわ」
「しかし、特攻隊員の遺書を読めば、殉教的精神は明らかだと思いますが」
「馬鹿者!あの遺書が特攻隊員の本心だと思うのか」
 武田は怒りで顔をまっかにさせた。周囲の人がこちらを見たが、武田はまったく気にしなかった。
「当時の手紙類の多くは、上官の検閲があった。時には日記や遺書さえもだ。戦争や軍部に批判的な文章は許されなかった。また軍人にあるまじき弱々しい事を書くことも許されなかったのだ。特攻隊員たちは、そんな厳しい制約の中で、行間に思いを込めて書いたのだ。それは読む者が読めば読み取れるものだ。報国だとか忠孝だとかいう言葉にだまされるな。喜んで死ぬと書いてあるからといって、本当に喜んで死んだと思っているのか。それでも新聞記者か。あんたには想像力、いや人間の心というものがあるのか」
 武田の声は怒りで震えていた。武田の妻がそっと夫の腕に手を添えた。
 高山は挑戦的に身を乗り出して言った
「喜んで死を受け入れる気のない者がわざわざそう書く必要はないでしょう」
「遺族に書く手紙に『死にたくない!辛い!悲しい!』とでも書くのか。それを読んだ両親がどれほど悲しむかわかるか。大事に育てた息子が、そんな苦しい思いをして死んでいったと知った時の悲しみはいかばかりか。死に臨んでせめて両親には、澄み切った心で死んでいった息子の姿を見せたいという思いがわからんのか!」
 武田は怒鳴った。
「死にたくないという本音が書かれていなくとも、愛する家族にはその気持ちはわかる。なぜなら、多くの遺書には愛する者に対する限りない思いが綴られているからだ。喜んで死ににいく者に、あれほど愛のこもった手紙を書けるものか」
 武田は涙を流した。さきほどからウェイターがじっと見ていた。
「新聞記者だと―。あんたは死にいく者が、乱れる心を押さえに押さえ、残されたわずかな時間に、家族に向けて書いた文章の本当の心の内を読み取れないのか」
 涙を流して語る武田に、高山は口元に冷ややかな笑みを浮かべた。
「私は書かれた文章をそのまま受け取ります。文章というものはそいういうものでしょう。出撃の日に、今日は大いなる喜びの日と書いた特攻隊員もいます。また天皇にこの身を捧げる喜びを書いた者もいます、同じような事を書いた隊員たちは大勢います。そんな彼らは心情的には殉教的自爆テロのテロリストと同じです」
「馬鹿者!」
 武田は手のひらで机を叩いた。コップが音を立てた。ウェイターが思わず一歩近づいた。先程からずっと周囲の人たちがこちらを見ていた。
「テロリストだと―ふざけるのもいい加減にしろ。自爆テロの奴らは一般市民を殺戮の対象にしたものだ。無辜の民の命を狙ったものだ。ニューヨークの飛行機テロもそうではないのか。答えてみろ」
「そうです。だからテロリストなのです」
「我々が特攻で狙ったのは無辜の民が生活するビルではない。爆撃機や戦闘機を積んだ航空母艦だ。米空母は我が本土を空襲し、一般市民を無差別に銃爆撃した。そんな彼らが無辜の民というのか」
 高山は一瞬答えにつまった
「空母は恐ろしい殺戮兵器だった。我々が攻撃したのは、そんな最強の殺戮兵器だ。しかも、特攻隊員たちは性能の劣る航空機に重い爆弾をくくりつけ、少ない護衛戦闘機しかつけて貰えずに出撃したのだ。何倍もの敵戦闘機に攻撃され、それをくぐり抜けた後は凄まじい対空砲火を浴びたのだ。無防備の貿易センタービルに突っ込んだ奴らとは断じて同じではない!」
「しかし、信念のために命を捨てるという一点において、共通項は認められ―」
「黙れ!」
 武田は言葉を封じた
「夜郎自大とはこのことだ―。貴様は正義の味方のつもりか。私はあの戦争を引き起こしたのは、新聞社だと思っている。日露戦争が終わって、ポーツマス講和会議が開かれたが、講和条件をめぐって、多くの新聞社が怒りを表明した。こんな条件が呑めるかと、紙面を使って論陣を張った。国民の多くは新聞社に煽られ、全国各地で反政府暴動が起こった。日比谷公会堂が焼き討ちされ、講和条約を結んだ小村寿太郎も国民的な非難を浴びた。反戦を主張したのは徳富蘇峰の国民新聞くらいだった。その国民新聞もまた焼き討ちされた」
 高山は「それは」と言いかけたが、武田はかまわず言った。
「私はこの一連の事件こそ日本の分水嶺だと思っている。この事件以降、国民の多くは戦争賛美へと進んでいった。そして起こったのが五・一五事件だ。侵略路線を収縮し、軍縮に向かいつつある時の政府首脳を、軍部の青年将校たちが殺したのだ。これが軍事クーデターでなくて何だ。ところが多くの新聞社は彼らを英雄と称え、彼らの減刑を主張した。新聞社に煽られて、減刑嘆願運動は国民運動となり、裁判所に七万を超える嘆願書が寄せられた。その世論に引きずられるように、首謀者たちには非常に軽い刑が下された。この異常な減刑が後の二・二六事件を引き起こしたと言われている。現代においてもまだ二・二六事件の首謀者たちは『心情において美しく、国を思う心に篤い憂国の士』と捉えられている向きがある。いかに当時の世論の影響が強かったかだ。これ以後、軍部の突出に刃向える者はいなくなった。政治家もジャーナリストもすべてがだ。この後、日本は軍国主義一色となり、これはいけないと気付いた時には、もう何もかもが遅かったのだ。しかし軍部をこのような化け物にしたのは、新聞社であり、それに煽られた国民だったのだ。」
「たしかに戦前においてはジャーナリストの失敗もあります。しかし戦後はそうではありません。狂った愛国心は是正されました」
 高山は胸を張って言った。
 武田の妻が再び夫の腕をそっと押さえた。武田は妻の方を見て小さく頷いた。それからまるで呟くように言った。
「戦後多くの新聞が、国民に愛国心をすてさせるような論陣を張った。まるで国を愛することは罪であるかのように。一見戦前と逆のことを行っているように見えるが、自らを正義と信じ、愚かな国民に教えてやろうという姿勢はまったく同じだ。その結果はどうだ。今日、この国ほど、自らの国を軽蔑し、近隣諸国におもねる売国奴的な政治家や文化人を生み出した国はない」
 そして高山に向かってはっきりした声で言った。
「君の政治思想は問わない。しかし、下らぬイデオロギーの視点から特攻隊を論じることはやめてもらおう。死を決意し、我が身なき後の家族と国を思い、残る者の心を思いやって書いた特攻隊員たちの遺書の行間も読み取れない男をジャーナリストとは呼べない」
 武田の言葉に、高山は傲然と身を反らせた。そして腕を組んで言った。
「いかに表面を糊塗しようと、特攻隊員の多くはテロリストです」
 武田はじっと高山を見つめた。そして静かに言った。
「貴様のような男を口舌の徒というのだ。帰ってくれたまえ」
「わかりました、失礼します」
 高山は憮然とした顔で立ち上がった。姉は一瞬迷った表情を見せたが、すぐにそのあとを追った。
「君は帰らないのか?」
 武田は一人残ったぼくに聞いた。
「ぼくの祖父は特攻隊で死にました」
「そうだったな。宮部さんのお孫さんだったな」
「ぼくは祖父の最後を知りません。我が家には祖父の遺書も残っていません。ですが、今、武田さんのお話を伺って、祖父の苦しみが幾分か理解出来たような気がします」
====================

 以上、長々と引用しましたが、本文ではこの後もしばらくマスコミの変節のせいで軍神から狂信者へと運命を翻弄された人々の話や軍内部での立場の弱い者から半ば詰め腹を切らせるような形で死地へと追いやっておきながら戦後はのうのうと生き延びた旧軍高官に対する恨み言が綴られたのち、この話のもう一人の主人公であるところの宮部久蔵一飛曹の運命を決定付けることになる事件の回想へとつながります。
 まあ、このあたりの部分をごっそり削ってしまわない限りはあのテの人達はこの話を右翼だなんだと言って批判するでしょうね。
だって自分たちの先輩の罪過が名指しで批判されているんですから。

・・・もっとも、小官の私見を述べれば、マスコミが過ちではなく故意に日本を負ける戦争へと誘導した実例としてあまりにも有名な尾崎・ゾルゲ事件に触れなかったり、件の狂った軍国主義者たちは単なる暴力革命論者の利己主義者だったので口先では忠君愛国と唱えながら実際には昭和天皇を弑逆しかねなかった、というかむしろ事実、玉音盤を奪おうと皇居を襲撃したといったその筋では有名な話に触れないだけまだまだ手心親心だろうに、いったい何時まで自分の過去から目を背け続けてカマトトこいてやがるんだこいつらわと思うのですけどね。

0 件のコメント: